いつか来た道

札幌に向かう列車の中で父と話す。
この前に来たときは、いつだった?
父が札幌に来るのはもうずいぶん久しぶりだと思っていたけれど、
よくよく考えると8年前に伯父がなくなったときは父がひとりで来ていたのだ。
札幌で叔母と落ち合ってはいたものの、
父はもう80歳になる頃と思われ、
当時義母の介護があったにしても、私がついてこようと思った記憶がないので
父がひとりで札幌まで行くことにほとんど不安を抱いていなかったのだと思う。
ここ数年で急速に足腰が弱くなり、視力も落ち
夏の暑さにもぐったりとするようになった。
「もうとてもひとりじゃ右も左もわからないな」
父の今の一年は私の一年とは違うのだ。
やはり今回来てよかったとあらためて思う。

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札幌到着。
札幌駅の様変わりぶりは来るたびなのだと思う、JRタワーなど見上げて驚く父。
千歳で軽くお昼は済ませたので、とりあえずホテルに行って荷物を預けることに。
あと30分待っていただければお部屋に入れますがとフロントで言われる。
少し部屋で一休みしてからのほうがいいかなと思い
その旨父に話すが、休まなくても大丈夫だと。

実はこの日、ホテルの目と鼻の先で友人が個展を開いているお知らせをいただいていた。
marronwさんのタペストリー二人展。

8月に来ていたら見ることができなかったけれど、
今回の急遽決まった札幌行きとタイミングがぴったりだった。
パックでセットになっていたホテルが個展の会場の至近距離にあったのも
偶然のめぐりあわせ。
今回は父のために来る旅だったので、
北海道の友達にもいっさい連絡せずに来ていた。
父の気持ちがそちらに向かわなかったら、すっぱり諦めようと思っていた。
一日のうちでも気分はあっという間に変わるので
直前に話してみた。
この日の午後は北大の方面をぶらぶらしてみようと思っていたので
道すがらにある友達の個展にちょっとだけ寄り道してもいいかな・・と。
すると思いのほか父の快諾。
台風の遠い影響の強い風を受けながら駅前通りを歩く。

個展期間は6日間、常時marronwさんがいるとも思えなかったので
もしいなければ、作品だけ見せていただき
伝言をして帰るつもりで行ったが、、幸運にもいてくださった。
いたずらっぽく笑いかけると、父と一緒だったせいもあり
ん?誰?というような戸惑いの表情。
次の瞬間、ええっ!とびっくりして気づいてくださった。
それでもどうしてここに??と、目をまるくするmarronwさんだったけれど
ほんとうに喜んでくださった。
父と一緒に作品を見せていただく。

エネルギッシュで、やさしくて、繊細で。
ひとつひとつにmarronwさんの想いが色となり風合いとなって
うつし込まれ、織り込まれている。
タペストリーというよりも、それは絵画のよう、
凛と、しかも愛らしいチューリップの花びらの一部が招待状の赤。
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どれも想いのこめられた作品ばかりだけれど
その中に、ぱっと目を引く感じではないのに、ぜか心惹かれるひとつがあった。
いつか来た道。
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秋の木の葉舞う道を想わせる色合いと趣き。
どこか懐かしいような、あたたかな雰囲気があふれている。
たまたま父と一緒の札幌という自分の心情と重ねてしまったところもあったかもしれない、
今回の旅をしながら、たびたび
幼い日に父に連れられて札幌の街を歩いた頃のことを思い出した。
かつては父に手を引かれて来たところへ
今は私が父を気遣いながら歩く。「いつか来た道」

メールもしないでの訪問、ほんの10分か、15分ほどの短い時間だったけれど
作品にじかに触れることができて大満足。
もっとゆっくり見せていただき、おしゃべりもしたかったが、
父が疲れないうちにとおいとました。
ブログを始めた頃は、そんな得たいのしれないものに現を抜かしてと
手厳しい批判いっぱいの父だった。
でもいつしか私のブログのつながりを少しずつ話していくうちに
そんな友人達の話をこころよくきいてくれるようになっていた。
こうして父と一緒に札幌に来ることができたのも、
ブログの友人たちのおかげのような気がしている。


外に出ると、日差しが強い。
駅まであと少しというところで、
「さっきの道を行ったりきたりしているだろう」と
父、急にご機嫌ななめ。
いやいや、まっすぐだよと説明しても、なかなか納得しない。
暑くて疲れたのだろう。
これから駅の北側の北大のほうに行くからねと何度か言うと
そこは父にも馴染み深い場所、
やっと納得してくれる。
どこかで少しお茶でものんで休もうと思いながら歩く。
by sarakosara | 2011-09-19 16:00 |
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