春待ち
2016年 02月 09日
いつもつきあってくれるKちゃんと、如月の増上寺。
私の未熟さ故にこの世に生を受けることなく
雪の舞う日に消えた小さな命。
あれから30年の月日が流れた。
今年の冬は暖かかったのか、寒かったのか
梅の花は4分咲きくらい。
午前中は薄曇りで冷え込んでいたけれど
そこだけ日だまりのように白梅が香っていた。
東京タワーの見えるこの地には
それ以前にも
それ以後も様々な縁があった。
私にとっては特別な場所なのだと思う。
そこからタワーのふもとを歩き
かつての職場の向かい側にあった西久保八幡神社に向かう。
家族の、とくにスマがらみのお願いごとがある時は
なんとなく足が向いてしまう。
石段が少し急なのと、ビルとビルのはざまにあるため
目立たないのか、由緒ある八幡様なのだけれど
わりとひっそりとしていることが多い。
石段をあがると、
スマくらいの年頃の青年が数人いた。
私とKちゃんが手を洗っていると
「すいません、これ何て書いてあるのですか?」
少したどたどしい話し方で訊ねられた。
日本の人じゃないんだ。
ちょうど春節だし、中国の子かな?と思う。
おみくじを引いたものの
読めなくて困っていたようだ。
日本語で訊ねられたので、そこそこ話せるようだが
「おみくじは言葉が難しいのよ、わかるかなぁ」
そう言うと、
「わかります、読めないけれど」
そう言うので、ゆっくり読んであげた。
大吉だった。
嬉しそうに、ありがとうございますと笑顔。
もうひとりの友達のおみくじも持ってきて
これも読んでもらえますか?と。
こんどは末吉。
真剣な顔で聞き入っている。
わかる?とまた言うと
はい、だいたいと笑顔。
よかった。
これは持って帰ってもいいのですか?
そう続けてきかれたので
良い結果だったから
持って帰って、お守りにしてもいいのよ、
凶などが出た時は神社の木の枝などに結んでも帰ってもいいの。
そんなことを話した。
おみくじを引いた二人も、ほかのふたりも
ありがとうございましたと
丁寧にお礼を言ってくれたので
どちらの国から?と訊ねると
韓国です、と。
あらぁ、韓国だったんだ。
中国語なら少し話せるからと思っていたけれど
まさかの韓国の青年達だった。
Kちゃんが、私の顔を見て笑う。
韓国も旧正月を祝う習慣がある。
旅行なのか、こちらに来ている留学生なのか
詳しいことはきかずにしまったけれど
みんな礼儀正しい子たちで
アンニョン!
そう言って手を振って見送ったら、
笑顔を返してくれた。
ささやかな八幡様での出逢い。
お参りをおえてから
私もおみくじを引く。
今年初めてのおみくじ。
ちなみに、ここのおみくじは10円。
こんなに安いのに、
以前引いた時も
とても素敵で深い意味の言葉が書かれていて
その時の励みになった。
今回もそんな結果だった。
大切にもって帰る。
そこから、おひな様好きなのに
男の子ばかりのKちゃんと
目黒雅叙園の「百段雛まつり」へ。
玄関を入ると愛らしいおひな様が迎えてくれた。
百段階段のおひな様は
撮影禁止だったけれど
今年は、みちのくのおひな様特集。
津波にのまれて打ち上げられた古いお雛さまもいらっしゃって
長い年月大切に保存されてきた
時の流れの重みを感じさせてくれる。
暖房無しのしんと冷えた百段階段の部屋から
暖かなロビー階に戻ったら
美しい花嫁衣装が展示されているのをみつけ
うっとり見とれてしまった。
和服は美しい。
自分ではどうにもできない
小さな気がかり
春待ちのもどかしさ。
誰にというわけではないけれど
そんな小さな霜柱が
ゆっくりと溶けるような花嫁衣装の清楚な華やかさだった。
春が近づくと聴きたくなる「春の手紙」
春よこい。