スマとの夜

Mちゃんと別れてからスマにすぐ連絡。
鍵を持って迎えに行くと聞いていたので
これから東山に向かうのでよろしくと。
ところがなかなか既読にならない
夕方は研究室からいったん出られると言っていたのに。
合鍵は持っていないので部屋に入れず
もう一度「おーい」と大声で。

f0231393_17253275.png
やっと連絡に気がついてくれて、無事にスマの部屋へ。
少し話してから
晩ご飯は近所に出かけて一緒にしようということで
スマは再び研究室に戻って行った。

好きに過ごしていてよ
近所を歩いてきてもいいんじゃない?
そうスマに言われていたので
まずはトイレと思って入ったら
あらやだ、掃除できてない。

部屋の掃除機だけはかけておいたよと言っていたけれど、
お風呂場も今ひとつな感じ。
私も泊まらせてもらうわけだし、ささっと掃除しちゃおうと。

となると、足りないものがあれこれ。
すぐ近所にスーパーがあるので買い出し。
翌朝の朝食やらなんだかんだ買って
トイレ掃除、風呂掃除、洗い物。

まぁ男の子の一人暮らし、
毎晩深夜まで研究室だというし
我が家の近くのミコのように
具合が悪くても来てやれない距離。
たまにこれくらいのサービスはしてやらなくちゃと
つい甘くなってしまう。

ひととおり掃除も終えて腰を下ろして時計を見ると8時。
そろそろお腹が空いたなぁ
でも、急かしちゃかわいそう。
テーブルの上の「あすなろ白書」を読み始めた。
昔ドラマがあったっけと
面白くなってきた頃、スマから連絡、9時をまわっていた。

連れていってくれたのは、神宮丸太町にあるクウカイという居酒屋。
こじんまりとしていて居心地のいいお店。
食材や味付けにもやはり京都らしさが感じられる。


f0231393_18074664.jpg
食べたら研究室に戻ると言っていたので
ビール一杯だけねと二人で乾杯。
ところがお料理は美味しいし、お酒も美味しいし。
スマも、ああたまにはいいかなぁと
リラックスモード。
もう誰も研究室には残ってないというし
やり残しもあと少しだから明日の朝早く行くよというので
うん、たまにはいいじゃない
好きなもの食べなさいよ、とまた甘くなる。

高校生の頃は一緒に出かける用事があっても
わざわざ隣の車両に乗るくらい
母親といることに照れや抵抗があったのに
今はこうして二人でお酒を飲むことができる。

カマをかけてもけして話さなかった話も聞けて
遠距離恋愛をしている彼女のこともスマの方から話してくれた。
そしてこれからのこと
研究、就職、山積みの難問もあること
時に弱音も垣間見せながらも
この先取り組んでいきたいことなど
彼なりに真剣に考えているビジョンがあることも知ることができた。

こちらにきた当初、夏になるくらいまでは
生きているのかと、本気で心配したこともあった。
そんな一年もなんとか過ぎていこうとしている。

ほろ酔いで外に出ると
底冷えのする夜気に震えあがる。
繁華街からは少し離れているので
もうあたりはすっかりひっそりと暗い。

自転車を押すスマにバッグを預け
コートのフードをすっぽり被って
両手で襟元を抑えても、カタカタふるえそうなくらい寒い。
でも、こんなふうにスマと歩く夜もいいものだ。
遠く離れて暮らして
お互いに今までとは違う気持ちで向き合うこともできたような気がする。


# by sarakosara | 2017-01-31 21:53 |

とっておきの時間

三月には、担任をする6年生の子たちを送り出すミコ。
初めてのことで、袴を借りて
私が娘時代に母が作ってくれた着物で行くことになった。
淡い桃色に薄紫の花がちらほらとある絞り
私も一度しか袖を通していないので、母も喜んでいると思う。


長襦袢に半襟をかけながら
和服が好きだった母は、しょっちゅう半襟がけをしていたなぁと思い出す。
穏やかな昼下がりの針仕事。


f0231393_17413023.jpg

この冬休みはあまり予定を入れず
大切な約束だけにして
ゆっくり自分の時間を過ごすことができた。

寒い日は、おでんを朝から仕込んだり。
りんごジャムを作ってスマに送ったり。


f0231393_17420855.jpg

一人のお昼。
食べたいものを食べたい量でゆっくりと。
眠くなれば寅さんに申し訳ないなぁと思いつつ、うとうと。
そんな申し訳ないなぁの気持ちを込めて?
圧力鍋で寅さんの好きな
ほろほろのお肉のビーフシチューを作ったり。



f0231393_17422934.jpg
宵闇がゆっくりとやってくる前の
夕方の静かな時間。
傾いて行く陽の光を惜しみながら本を開く。
この時間の光、閉じ込めてしまっておきたい。


テレビはほとんどつけず
いったい何をしていたのかなと思う
いや、これといって何もしていなかった
そんな二週間あまり。


やらなくてはならないことは、探せば山ほどあるけれど
あえてそれには手をつけず
でも、とっておきの時間になった。


さて、明日から仕事開始。

京都の話も続きます。



# by sarakosara | 2017-01-22 17:53 | 日々

嵯峨野さやさや

竹林を通り抜けると、やがて嵐山のメインストリート。
Mちゃんのお薦めの甘味屋さんがあるというのでついて行ったのは
渡月橋にもほど近い
X cafe(イクスカフェ)というお店。

f0231393_12083088.jpg
旧豪邸をリノベーションしてあるらしく
石庭や緑の美しいお庭を見ながら甘味が楽しめる
とても雰囲気の良いところ。

色々魅惑的なメニューがあったものの
思いの外お腹がすいていなくて迷った末に
京黒ロールの抹茶味を二人で半分に。
黒い生地は竹墨が練りこんであるとのこと
もっちりした食感で、クリームも抹茶のほろ苦で美味しい。
これなら二つ一人でいけたかも。
また足を運んでみたいお店です。

f0231393_15282267.jpg

Mちゃんとは、6年前の春に
山口のKちゃんも一緒に三人で大阪で会う約束をしていました。
しかし、その直前に東日本大震災が起きて
我が町は計画停電もあったり
関東圏も少なからず影響があり
私がとても旅行に行ける気持ちじゃなくなってしまって
大阪を味わってもらおうと、あれこれ計画を立てていてくれたMちゃん
三人で会うのは初めて、と楽しみにしていてくれたKちゃんには
ほんとうに申し訳ないことをしてしまったと
それからも時々思うことがありました。

今回ももし叶うなら
山口のKちゃんにも声をかけてみようかなと思ったのだけれど
お嬢さんがお産で帰ってこられるという記事を見ていたので
それはまたの機会にして
まずは、せっかくひとり時間の取れる今回
Mちゃんに会えたらいいなと
思い切って誘ってみたのです。

「あの頃楽しかったね〜」
と、Mちゃん。
「うん、楽しかったね」
そう返事をしてから、Mちゃんの言う、あの頃を思い出していました。

f0231393_16300770.jpg
あの頃はブログに夢中だった。
時に現実の生活がなおざりになるくらいに
仕事から帰るとパソコンに向かって
みんなの記事に一喜一憂して。
感情移入しすぎて友達との距離もうまくとれず
正直言って、私には楽しかっただけではなく
ほろ苦い思いもいっぱい詰まっている時間でした。

遠くの国の友達の話も出ました。
ちょうどオバマ大統領が誕生した時だった
彼女の気持ちも浮き立っていたっけ。
あれから8年。
どうしているのかなぁと思う人達は他にも何人か。
そして、もっと遠くの国へ旅立ってしまった大切な人もいた。
色々なことが変わって
それぞれの今がある。

ちょうど偶然
その「あの頃」を共有していた
別の友人から、年賀の返事のメールが届いていたので
行きの新幹線から
これからMちゃんに会いに行くこと
嵯峨野を二人で歩くことを伝えると
よろしくと一緒に、懐かしい歌のことが書かれてありました。
それからしばらく、この歌が頭の中でくるくる。



もうブログを書かなくなってしまった方も多いけれど
今も変わらず、こうして語り合える存在でいてくれる友達に感謝。

スマのところへ行く路線を念入りに教えてもらい
これからもよろしくね、
また会いましょうと、さようなら。
ありがとう、トックン。




# by sarakosara | 2017-01-22 16:17 |

あの日の景色

念仏寺からまた引き返し
もと来た分かれ道を今度は行きとは違う方へ。
そろそろお昼だねと、行き当たりばったり
惹かれる方へ。

寿楽庵、ここにしようか。
靴をぬいで板戸を開けると座敷にヤカンの乗った石油ストーブ。
ガラスの入った障子の向こうには庭が見えて。
知り合いのおばちゃんのお家に
お邪魔したかのようなほっこり落ち着く雰囲気の茶店。

二人とも、あつあつの鍋焼きうどんにしました。
お餅入り、具沢山。
f0231393_15503016.jpg
品のいいお店のおばちゃんが
地のレモンをいただいからレモン茶を作ったので
どうぞとサービスしてくださり
それから庭の方を指して、
このすぐ裏手に、寂聴さんの寂庵があるんですよ、
せっかくだから寄って行ったらと
これまた品のいい京言葉で教えてくれました。
ゆず茶ならぬ、レモン茶美味しゅうございました。

お薦めの寂庵さんをまわり
表札の瀬戸内というお名前に、おお、ここにいらっしゃるのかと感心し
嵯峨野の竹林方面へと向かう。

二尊院の山門に書かれた小倉山の文字を見ながら
百人一首より先に小倉大納言を思い出していたその時
Mちゃんが、
「あ、ここ!」と、指差した。
「ね、ここじゃない?」

左に折れると落柿舎がある曲がり角の向こうに
確かに私の記憶の中の風景が広がっていました。

f0231393_16330340.jpg
「そう、ここ、ここ!」
それにしても、Mちゃん、よく私の説明だけで
ここだとわかってくれて。
「やっぱり奈良じゃなかったのね」と喜んでくれた。

その時人力車のお兄さんがお客さんを乗せて立ち止まり
ここは数百年前から変わらぬ風景が広がっているのですよと
まるで私に伝えてくれているかのように話し、また走って行きました。

高校生の時に来た時は
反対にこちら側から念仏寺に向かったのでしょう。
なぜかこの道が印象的で記憶に焼き付いていたのです。
原っぱの向こうの茅葺き屋根が落柿舎。
その名のとおり、まだ柿の木には赤い実がいくつか残っている。
念仏寺をリクエストした一つの理由に
この風景をもう一度見てみたいという思いがあって
ほんとうに嬉しかった。
あの18歳の嵯峨野を追想することができました。

f0231393_16512359.jpg
嵯峨野の有名な竹林を通る頃は奥の道は
山の影になり仄暗くて、妖の世界。
二人一緒の写真を撮ってもらい
最後のお茶の時間。



# by sarakosara | 2017-01-20 17:15 |

化野念仏寺

念仏寺、ここはかつて風葬の地だったとのこと
野ざらしになっていた遺体を
空海が供養したことがこの地の始まりだそうです。

京都には、鳥辺野(とりべの)、化野(あだしの)、蓮台野(れんだいや)という
三つの風葬地があったと言われており
化野のあだしとは、はかないとか、むなしいという意味があり
このあたりは、あだしなる野辺と言われていたのが
化野となったのだといいます。

西院の河原。

f0231393_19253858.jpg

儚いの変換をしていたら、
墓ないと出てきて、偶然とはいいながら
まさにお墓のない人たち野ざらしになった人たちの
供養のためにできた場所だったのだなと。

Mちゃんに聞いた話では
鳥葬という風習もあり、その場所もあったそうで
やはり野ざらしになった遺体を鳥がついばむ形で弔う。
これを酷いと思うのか
あるいは、自然に帰っていくととらえるのか。

今ではありえない形ではあるけれど
誰もがいつかはたどり着く死というもの。
そしてお墓というものへの考えを
あらためて思うものであり
互いに一人っ子のMちゃんと私。
親のお墓や仏壇の話
そしてやがて迎えるであろう自分の最期の時のことも
少し話しました。

f0231393_19301504.jpg
トーラナという鳥居の原型となった
日本でも珍しい三層の門が
仏舎利塔の前に建っています。
お寺に鳥居?と思ったのですが

トーラナがインドの仏教寺院やヒンドゥー教寺院にみられる門のことだそうで
それで納得というわけ。

本堂のそばに
こんな言葉が書かれていました。

f0231393_19361043.jpg
出典はわからないのですが
なかなか深くて面白い。
豆腐の美味しい嵯峨野ならではの例えなのでしょうか。
なかなか豆腐のような女人には程遠い我が身を
思い知るばかりだけれど
終わりの三行がいいなと。

豆腐の如く柔らかくてしかも形を崩さぬ
味がないようで味があり
平凡に見えて非凡

もう一つ、そのそばにこんな言葉も。
f0231393_21175180.jpg
俗世間つもり違い十ヶ条。
ああ、わかるわかる。
こちらは、すっとわかります。
煩悩は捨てきれないし
欲もまた。
生きていくって奥深いものです。



# by sarakosara | 2017-01-16 19:49 |

念仏寺への道

京都駅からJRの在来線に乗り換えて降りたのは嵯峨嵐山駅。
そこから一緒に歩いたのはブログの旧友Mちゃん。

もうずいぶん前に初めて会った時、
歩き潰したという靴を片手に持っていて
びっくりしたり笑ったりしたのも懐かしいこと。
だから歩け、歩けはお手の物と思い
前もって、いくらでも歩きますよ〜と伝えてあった。
私のリクエストは化野念仏寺。

f0231393_18312388.jpg

穏やかに晴れ、そぞろ歩きにはもってこい。
道案内は任せたよと大船に乗ったつもりだったけれど
案外方向音痴なのよぉと言いながら
でも今はこれがあるからねとスマホ片手に笑うMちゃんについていきます。

平日、しかも化野は少し奥まったところにあるためか
観光客の姿もまばらで
うらうら静かな田舎道が続きます。
少し勾配があるのか
おしゃべりしながら歩くと、軽く息がきれる感じ。
私より少し年上のMちゃんは涼しい顔で颯爽と。
さすがテクテクのプロ。
聞けばハイキングのサークルに入ったのだけど
80代のお年寄りがそりゃぁ元気とのこと。

竹細工の店やおみやげ屋さんが並ぶ通りに出ると
現れたのは異様な姿の達磨さん。
ちょっとぎょっとする姿。眉毛でお目目もかくれているし。
f0231393_17182145.jpg
日本一の良縁ヒゲダルマとある。
お互いまだ独身の子がいるので
これはありがたくご利益にあずからねばと、お髭をなでなで。
good match of top of Japan と書いてある。
top of Japanにほんまかいな?と言ってはご利益はないでしょう。
お願いしますね、ダルマさん。

f0231393_17364564.jpg
まだ正月飾りのある鮎料理の店が数件並ぶあたりを通りすぎると
化野念仏寺への入り口が見えきました。

念仏寺はもう40年近く前
高校の卒業の時に
友達数人で卒業旅行に来たところ。
当時はanan nonnoが女の子に人気の雑誌で
アンノン族は雑誌片手に旅に出た
まさにそんな流行に乗って、この地を訪れたのだと思う。

f0231393_18130467.jpg
その時に念仏寺までの道で
とても印象に残っていたのが
開けた風景の中の田舎道。
田んぼでも畑でもない、そんな記憶があるのだが
念仏寺への道すがら、
その記憶の中の風景はなかった。

f0231393_18150951.jpg
Mちゃんも一緒に、ここら辺かしらと探してくれたけれど
どうも違う。
もしかしたら奈良だったのかも。
私の記憶も曖昧で自信がないし
風景も当時とは変わっただろう。
家もけっこう建ったのかもしれないしねとMちゃん。

果たしてその記憶の中の風景は見つかったのか。

続く


# by sarakosara | 2017-01-16 18:25 |