秋の日に
2013年 10月 20日
昨年の今ごろ手術をして
今は寝たきりになってしまった伯母のお見舞いに。
気持ちよく晴れた秋日よりだった。
伯母は今年94歳、90歳を超えてからの手術は決断が必要だったらしいが
痛みから解放してあげたい一心で従姉妹も決断したらしい。
それから一年。
家族は半ば諦めていたけれど、みなの予想をいい意味でうらぎって
今、伯母は穏やかな表情をしている。
しかし口からの食事はできず、歩くことも話すこともままならない。
誰しもこれでよかったのか?と思う。
家族であればまして。
でも今の穏やかな表情をみると、
目でコンタクトしてちょっと微笑むような顔をするのをみると心がなごむ。
伯母はずっと畑仕事をしてきて、
足が不自由になってからも歩行器を使ってまで畑に向かったそうだ。
病院でも週に二回、車椅子に移らせてもらって屋上に出られる日があるらしい
周りは穏やかな風景が広がる郊外。
いっぺんに表情がいきいきとよみがえるのだという。
生きとおすということは実に重くせつなく
廊下を歩く時に目に入る同じ病棟の多くのお年寄りをみながら、
父のことも思いだしてしまった。
帰りがけにせっかく来たのだからと従姉妹がご主人と一緒に
伯母の病院の近くにある展望台に連れていってくれた。
大きく広がる山々と海。
遠く洋上にかずむ島影をみつけて
あれは?と訊くと
あれは大島だと教えてくれた。
まさかそれから数日後に大きな自然災害に見舞われるとは思ってもいなかった。
まさに黄金色に輝く夕陽。
穏やかで豊かな風景に見えた。
豊かな自然に囲まれたこの国だからこその
自然災害もほんとうに多い。
こうやって人は自然とおりあいながら生きてきたのだとはいえ
ことに最近の思いもよらないような大雨や竜巻など
自然がどうかしてしまったかと思うほどだ。
従姉妹が伯父の残した田んぼを何とかしなくてはと
ずっと続けてきた仕事をやめて不慣れな農業を始めたは数年前のこと。
試行錯誤しながらほとんどひとりで米作りに取り組み始めた。
それこそ台風被害を受けた年もあって
夜中に車を走らせて実家の田んぼを見に行ったそうだ。
いつの間にかほんとうに美味しいキヌヒカリが穫れるようになった。
今年もさっそく9月に新米を送ってくれた。
お彼岸には餅米にまぜてお赤飯を炊き、仏さまにもお供えした。
ちょうどその頃、友達から酢橘が届いた。
いつものおじいさんが作るスダチです、
今年は猛暑で収穫に影響があったらしい、とメールにあった。
毎年届けてくださる酢橘をみるたび、
まだお会いしたこともないおじいさんを想う。
ありがたくいただきます、
そう思いながら香りと味を楽しむのです。
実りの秋に思うことあれこれ。