今回の旅は、すべて仙台のお母様が段取りをしてくださり
ほんとうに、至れり尽くせりのおもてなし。
まごころ込めて、どうしたら楽しんでもらえるかと、
Y君の妹のKちゃんとあれこれ考えてくださった、あたたかなものだった。
泊まったのは、秋保温泉の佐勘という宿。
居心地、温泉、食事、どれも素晴らしくて、感激。
ミコ夫婦は、つかの間それぞれ元の家族と一緒に
我が家と、T家とふた部屋に分かれ、温泉にゆっくり浸かった後は
みんな揃って夕食。
大人に一人混ざって退屈しないかなぁと心配していたTちゃんも、
テーブルの周りはくるくるしたものの、終始笑顔でご機嫌よく過ごしてくれて
仙台ならではの地酒に、寅さんスマもご機嫌。
和やかに会話もポンポン弾み、お腹もぽんぽん。
翌日も快晴、清々しい風が吹く絶好の行楽日和。
まずはニッカウヰスキーの宮城峡蒸留所へ。
ここでは、無料でガイドさん付きの蒸留所見学ができる。
もともと緑豊かで清らかな流れに恵まれた宮城峡だけれど、
初夏のこの季節は、新緑に加え山桜や八重桜も見頃で
ますます美しい景色が広がっていた。
ここは、竹鶴政孝が
異なる蒸溜所で生まれた原酒をブレンドすることで、
ウイスキーはより味わい深く豊かになる、という信念を元に
北海道の余市に次いで作った、第二の蒸留所。
風土や水によって、ウイスキーの味わいが違うというのだ。
もともと造り酒屋の息子だった政孝は
日本酒を作る時のように
ウイスキーの蒸留釜にも、しめ縄をかけたのだという。
こうして蒸留された原酒は
様々な樽で眠り、年数を経るごとに、琥珀色に深まり
深くて良い香りがここで育つ。
見学を終えてから、お母様が見つけたという
山あいのお蕎麦やさんへ。
胡桃を練りこんだツユのお蕎麦が絶品だった。
そして一路、仙台郊外の住宅地にあるT家に。
いく道々も緑が豊かで、
水の張られた水田も田植えを控えて水面がキラキラしている。
通りすがった原っぱを見ながら
ふっと、胸がきゅんとするような懐かしさを覚えた。
なんだろう。
しばらく考えたら、自分が小さな頃の家の周りの風景と
その過ごした時間だと気付いた。
春にはシロツメクサが原っぱいっぱいに咲き、
田んぼのあぜ道をいとこ達と歩いたこと
家の近くの小さな川のほとりでは、母や祖母とノビル摘みをしたこと。
記憶の奥に眠っていたその懐かしい風景が急に目覚め
タイムスリップしたかのような懐かしさを感じた
不思議な感覚だった。
T家では、みんなでY君のお父様の仏壇に手を合わせ
気持ちのいい庭に面したリビングで
お茶をいただきながら
お母様からもご主人の思い出話なども聞いて、そろそろおいとまの時間。
お母様や妹さんが、どれくらいこの旅に心をくだいてくださったか、そのすべてに感謝。
そして思った。
そうか、Y君は、こういうところで育ったのだ。
ミコと結婚してからも
私たち夫婦と過ごす時間はまだ日も浅く
彼の人となりをよくは理解できない部分もあったけれど
今回仙台を訪ね、お母様や妹さん達と過ごし
育った家やその風景を見て
色々なことがストンと腑に落ちる気がした。
奇しくもスマもまったく同じことを話していたので
私だけが感じたことではなさそうだ。
帰りの新幹線で、ほんとうにいい旅だったなと言った寅さんも
たぶん同じ気持ちだったと思う。
Y君が愛してやまない故郷、仙台。
私たちも大好きになりそうだ。