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青い屋根の家

暑い暑い日が続いています。
色々なことがあった一ヶ月。
職場の友達がまた一人、急遽退職となり
仕事が山積みのさなか、新人さんが数人入ったり、
先週はちょっとしたアクシデントで救急に駆け込んだり
もうすっかり元気ですが
なんとなく落ち着かない日々です。

出逢いとお別れは突然のこと。
そんな一つ一つと折り合っていくのが人生なのだろうけれど。

先日も、家のチャイムが鳴って
宅配便かなと出てみると、お隣さんでした。
ご主人も一緒で、なんだろうと思うと
引っ越すことになったのでご挨拶に、と話された。
借地の更新を機に娘さんの嫁ぎ先の近くに引っ越すことにしたと。


細い私道を挟んでのお隣。
父と母がこの地に引っ越してきたのが60年近く前のこと。
その時にはすでにお隣さんがいて
母も同世代のご近所に色々助けらてたことも多かったと思う。

父や母たちの世代から私たちへ世代交代しても
変わらずお隣だった。

我が家の台所に立つと
リビング越しに、お隣の青い瓦屋根が見える。
夕方になれば、明かりが灯る。
時には風に乗って夕餉の匂いがしてくる。
空気のように当たり前にあったもの。
どこかで、お隣さんは永遠にお隣だと思い込んでいたのかもしれない。
ぽっかりと穴が空いたように淋しい。


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お隣のご主人K君は私より二歳年上。
一人っ子同士で幼い頃は兄妹のようによく遊び
互いの家を行き来した。
お風呂に入って晩御飯をご馳走になってくることも度々あって
その頃のことは以前のブログに「カレーにソース 」という話で書いている。

思春期になるとお互い恥じらいもあり
すっかり話すこともなくなってしまったK君と私。
でも行き来がなくなることと反比例するように
私の憧れの気持ちは強くなり
向かいの工場の壁で野球の壁当てをしている
ポーン、ポーンという音がすると
そっと廊下の窓からのぞいたりしたもの。

けれど、自分の気持ちを伝えることもできぬまま時が過ぎて行き
それはもうそんな気持ちも忘れていた二十歳過ぎ
突然K君がやってきて
ずっと気になっていたと、そして付き合ってもらえないかと
打ち明けられたものの
その頃はすでに好きな人がいて、お断りするしかなかった。

互いにもう少し早く打ち明ける勇気があれば
その後の二人のゆく道は変わっていたのだろうか。


それから数年、K君は可愛いお嫁さんをもらい、
同じ頃、私も結婚をした。

K君のお嬢さんマイちゃんと
我が家のスマは同じ年に生まれ、同じ小学校に通った。

ミコなども交え、歳の少し違う子供達も
近所で一緒によく遊んだもの。

私とK君は結局何もなかったのだけれど
幼馴染であることを知っている奥さんになんとなく気が引けて
その後もK君とは親しく話をすることもなかった。

それでも、ずっとずっとお隣でいてくれていたことが
こんなにも自分の中で大きなことになっていたのだと
今さら気付かされる。

K君の奥さんが、挨拶の時に
色々片付けていたら、
古いアルバムに、小さな頃の夫と、さらちゃんの写真がでてきたりしたの
と、優しい笑顔で話してくれた。
その横で、すっかり髪の白くなったK君も笑っていた。

我が家にもあった数枚の写真。
ほっそり気の優しいK君と、
ぽっちゃぽちゃで、ちょっとわがままな私。
遊ぶことで一日が明け暮れていた平和な日々。


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ずっとずっとお隣でいてくれたことを感謝する手紙を添えて
心ばかりのものと一緒に奥さんのM子ちゃんに渡した。

淋しくなったね、
淋しくなっちゃうねと、
明かりの灯らないお隣を見るたび
寅さんと話している。

今日から青い屋根の家の
解体工事が始まった。






by sarakosara | 2018-07-21 23:15 | 日々

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